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労働生産性や全要素生産性の計算方法は?エクセルでの正しい求め方を紹介
物価上昇などが叫ばれる中、会社の生産性を見直したいと考える企業も少なくはないことでしょう。本記事では「労働生産性」をはじめとするさまざまな生産性の概要や、エクセルを使った計算方法について紹介します。新規事業の記録や既存事業を見直しなど、実務のシミュレーションでぜひ活用してみてくださいね!
押さえたい基本 生産要素とは|生産の三要素
一般的には生産活動のためには「土地・資本・労働」の3つの要素が必要とされています。
土地‥生産拠点 資本‥原材料や機械など製品を生産する物的要素や運営資金 労働‥労働力 |
資本の本来の意味は「事業をするために必要な基金」です。一方で、広い意味では人や設備などへ使われることもあります。また、3つの要素のうち、労働力に支払う人件費は最も費用がかさむ項目であり、変動性をもつため会社の労働管理の際にしばしば注目されます。
生産性|成果に対する効率を計る尺度
生産性とは、生産要素が有効利用されている度合いです。費用対効果の意味もあり、同じ成果に対して、投入した生産要素量が少ないと、生産性が高いといえます。
生産性 = 成果 ÷ 投入した生産要素量 |
単位はなく、あくまで今までの売上データベースをもとに定義付けや比較をし、相対的な尺度として図るものです。 同じ条件で測定したもののうち、少ない母数で大量に生産できるほうが望ましいため、「数字のより大きい方」が、生産性が高いと見なされます。 ポイントは、成果を「個数」で見るか「付加価値」で見るかの違いで項目が変わります。
「個数」を成果とする生産性は「物的生産性」、「付加価値」を成果とする方は「付加価値的生産性」とよばれ、異なる2つの軸で見る尺度です。 計算対象の「投入した生産要素量」が「設備個数」「金額」「労働者数」などのうち、どの単位で行っているものであるかを確認することが必要です。 また、どのような種類の生産性でも、異なる種類同士は比較する対象や母数が異なるため、直接の比較はできません。
物的生産性|生産数の効率を計る尺度
物的生産性とは、生産性のうち「ある一定期間内に生産・提供できたサービスや物品の量」を成果とした生産性のことです。「労働者の数」を生産要素量ととらえて算出すると「物的労働生産性」となり、1人当たりの効率が算出されます。
物的労働生産性(1人当たりの成果)= 生産量 ÷ 労働者数 |
で算出可能です。
付加価値生産性|付加価値の効率を計る尺度
付加価値生産性とは、ある生産要素に対する成果を、粗利(売上総利益)として算出した生産性を指します。
付加価値生産性=粗利÷対象の生産要素量 |
また、生産要素を「労働者」とした場合の付加価値生産性のことを「付加価値的労働生産性」と呼びます。物的資本と労働力は費用のかかり方が異なるため、独立した項目として扱われます。
付加価値的労働生産性(1人当たりの粗利)= 売上総利益(売上-原価) ÷ 労働者数 |
また、売上総利益の定義は以下の通りです。
売上総利益 = 粗利 = 付加価値 = 売上 – 原価 |
さらに、付加価値的労働生産性は後述でも求められます。
労働者数1人あたりの生産要素量×生産要素量あたりの粗利 |
補足:人時生産性との違い
生産性のうち、労働者の単位時間を生産要素量とする考え方です。成果はほかの生産性と同じく生産量または付加価値(粗利)として2つの軸で見られます。計算には、一般的に粗利を用います。
全要素生産性|技術改革による生産性を表す指標
TFP(Total Factor Productivity)ともよばれ、資本とされるすべての要素に対する成果の生産性が算出可能です。一般には「コブ・ダグラス関数」と呼ばれる関数を用います。この方法を用いると、ある要素の変動に対する別の要素の変動を一定割合に保ち、考慮するパラメータが少なくてすむことがメリットです。計算方法については後述します。
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労働生産性をエクセルで求める手順
勤怠管理や工程表と売上に関するデータから求められます。数多くのデータを扱う際に気を付けることは、何の項目を見ているのかを意識し、混同しないよう分類することです。
物的労働生産性をエクセルで求める手順
1. 各部門毎の生産量・労働者人数についての、2種類のデータを用意する
2. 生産量÷労働者の式で割る
3. オートフィルで下まで計算する
付加価値労働生産性をエクセルで求める手順
1. 各部門の売上総額・原価・労働人者数の、3種類のデータを用意する
2. 付加価値(粗利)の計算項目を作り、労働者人数で割る
3. オートフィルで下まで計算する
全要素生産性をエクセルで求める手順
1.各部門ごとのデータを入手する
①生産量 ②設備をはじめとする資本の全投入量と内訳(数量や金額が分かるもの) ③労働者数をはじめとする労働力の人数や人件費の全投入量と内訳(数量や金額が分かるもの)
2. 全投入額に対する資本と労働者への投入費用割合を算出する
3. 生産量Y・資本投入量K・資本投入量割合βK・労働力投入量L・労働力投入量割合βL、の5項目に分ける
※前述にて定義づけた値について、コブ・ダグラス関数に代入すると全要素生産性Aはこのように計算されます。
A = Y / (K^βK × L^βL) (ただし、0<βK<1, 0<βL<1, βK+βL=1) |
4.整数とべき乗の部分を 自然対数ln(底がeの指数)で変換し、3つの項にまとめる
①生産量の項
ln(Y) |
②資本投入量の項
βK×ln(K) |
③労働力投入量の項
βL×ln(L) |
・自然対数ln(A)は
=LN(Aに該当するセル)
で求められます。
補足:e以外の底の場合の対数は
=LOG(Aに該当するセル,底)
で求めることが可能です。
5. 最後に、lnAを求め、全要素生産性Aを、対数から変換して計算します。
lnA=①-②-③ |
・Aは、=exp(lnAに該当するセル)で導出されます。
A=e^lnA |
6. オートフィルで下まで計算する(各期間ごとのデータ)
また、資本投入量についての計算を細かくしたい場合は、Aの分母の乗数の合計(βK+βL+‥)が1になる範囲で項をいくらでも追加し、割合を分割することが可能です。
計算した労働生産性が適切かどうかの判断
労働生産性を計算することで、算出したデータを用いて分析し、労働力による生産費用削減につなげることが重要です。生産費用削減が難しいときは、設備投資など「生産効率向上」へ目を向けるとよいでしょう。
シートをフォーマットとして保存すれば、数値を入力するだけでいつでも効率のよい分析が可能です。生産性向上を図る際は、どこにどのような資本を投入すればよいかを全要素生産性にてシミュレーションしてみることもおすすめです。
過去の労働生産性と比較する
業種や業務によって異なるため、勤怠表や工数表のようなチェック表をもとに、データを算出します。期間ごとにデータをとることで前年度、前期など段階を踏んで比較が可能です。
同業他社の労働生産性と比較する
一般の生産性に関しては用意するデータの種類が少ないため、上場している企業の場合、財務諸表から算出が容易です。ニュースや公開されているデータベースから、発表されている数値を使って推測を行えば、ライバル企業の生産性の動向を見抜けます。
労働生産性の改善方法
生産性が下がっている場合は、改善を行うことが重要です。労働力の人数や生産数を減らすことで製作費用を抑えられます。また、生産数が追いつかない場合は、設備投資や労働人数増強などで対策をします。
業種別平均基準と照らし合わせると、従業員の労働時間削減や、ワークライフバランスの整備が可能です。生産性どうしの関連性も見直したいものです。この章では、労働生産性の改善方法について解説します。
業務内容を可視化する
業務フローを見直し、業務内にあるムリ・ムラ・ムダを洗い出します。業務内容が複数にまたがる場合は工程表で、どの作業にどの程度の労力をかけたかを申告してもらい、同一フォーマットを利用して部署ごとに継続してデータでとりまとめるなどするとよいでしょう。
業務の平準化を行う
複数人で行う業務の場合、マニュアルを用意し、誰が担当しても同じ品質になるようにしておくことで製品の品質や工程を一定に保てます。事故や急病、退職で発生する社員の離脱が引き起こす事態にも対応ができるため、業務の平準化は重要なプロセスです。
人材育成を行い、1人当たりの生産量を上げる
経験に依存する部分は、研修や資格取得に対する補助など従業員のスキル向上をサポートすることで補えます。社員当たりの生産量を維持するためには「長く続けやすい職場環境づくり」が重要で、スキル支援体制のほかに「コミュニケーションの風通しの良さ」「給与体系」「福利厚生の充実」などに尽力する企業努力も大切です。
プロセスを見直し、自動化や効率化を行う
業務のプロセスを見直し、手作業で膨大な時間がかかることや、経験で差が出る部分は機械化や自動化を行うことも重要です。労働者が居心地よい就労環境を整え、プロセスを見直すと、少数精鋭の専門分野に特化した業務や、余剰資本で新規事業を進めることも可能にします。
改善に向けては自らデータを取り分析し、従業員の意見をとりまとめることや、活動を行うなどで働きかけをすると状況がよくなることもあります。いずれにしても、管理する立場の人間の「問題意識」「情報収集力」や「リーダーシップ」「当事者意識」で変えていける部分です。
労働生産性の業種別平均基準
単位時間当たりの労働生産性に関する全業種の平均は2019年度で1人あたり4,927円でした。しかしながら、業種や事業所の規模による格差があります。
この格差を埋めるためには、労働生産性の低い業種において、長時間労働の解消・評価基準の大幅改善・個人裁量拡大や技術力向上などの動きが期待されます。当事者である組織のリーダーがそれぞれに問題意識を持って取り組まなければならない課題です。
まとめ
生産性および労働生産性は、簡単な割り算で計算ができます。全要素生産性は対数やべき乗の関数、指数を用いて計算が可能です。計算自体は記録さえ取れる仕組みがあれば簡単です。しかし、効率化に改善策をとることは、社会の風向きを変えるところもあります。国や誰かの対応を待つばかりでなく、リーダーシップを持つ人間が自ら進んで当事者意識をもち、改善に取り組むことが期待されます。
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